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xiangze's sparse blog

機械学習、ベイズ統計、コンピュータビジョンと関連する数学について

へびの補題の写経

ブログ書き初めです。巳年なのでへびの補題の特殊な場合であるコホモロジー群の長い完全列の導出の証明の写経です。

意義、応用範囲

完全列とは \psi \cdot \phi =0
となる準同形写像ψ、Φを用いて作られた列

のことでコホモロジー群とは
Mの開被覆Uと可換環R上に値をとる関数(より正確には局所的な関数の張り合わせである"切断")とを対応づける写像であるコチェインの集合
 C^q(U,R)

 Z^q(U,R)=\{f \in C^q(U,R) | \delta f =0 \}
に対して
 H^q(U,R)=Z^q(U,R) / \delta C^{q-1}(U,R)
と定義される群です。ここでコバウンダリー作用素δは f \in C^{q}(U,R)に対して
 (\delta f)(U_0,U_1, \cdots, U_{q+1}) =\sum_{i=0}^{q+1} (-1)^i f(U_0,U_1,  \cdots, \hat{U}_i \cdots,U_{q+1} )
と定義されます。( \hat{U_i}はUiをのぞいたものという意味)
 \delta  \cdot \delta=0であることから
 H^q(U,R)=I
であるのが自明なようですが、Mの形状(トポロジー)によっては自明な形にならない場合があります。
このコホモロジー群の考えと以下で示す証明は1次元複素多様体の形状とその上での正則関数の極、零点の数とを関係づけるリーマン・ロッホの定理の証明などで用いられます。リーマン・ロッホの定理を多次元の場合に一般化したものが指数定理であり、物理学においてはある種の対称性の破れを説明する場合に用いられる(らしい)です。
以下が長い証明です。

主張

M: パラコンパクトなハウスドルフ空間
U: M上の開被覆
R,S,T M上の可換環
短完全列

Φ :R->S 単射
ψ :S->T 全射
があるとき、長いコホモロジ−群の完全列

が存在する。

証明の流れ

  1. 用語の定義と前提
  2.  Im(\phi^*) \subseteq Ker(\psi^*)
  3.  Ker(\psi^*) \subseteq Im(\phi^*)
  4. δ*の定義と代表元の取り方によらないこと
  5. 帰納的極限とパラコンパクト性を用いた拡張
用語の定義と前提

上記のようにコチェイン C^q(U,R)
 Z^q(U,R)=\{ f \in C^q(U,R) | \delta f =0 \}
に対してq次のコホモロジー群は
 H^q(U,R)=Z^q(U,R) / \delta  C^{q-1}(U,R)
と定義される。
また以下での証明のために
 \bar{ C}^q(U,T) =\psi(C^q(U,S) \subset C^q(U,T) }
を定義する。これによってコチェインの短完全列
 0 -> C^q(U,R) -> C^q(U,S) -> \bar{ C}^q(U,T)  -> 0
ができる。
コサイクルの境界写像 \delta: C^q(U,*) -> C^{q+1}(U,*) とψ、Φは可換であり、

のような可換図式が得られる。
またコホモロジー群間の写像Φ*,ψ*が引き戻しで定義できて、完全列

が得られる。この完全性の証明( Im(\phi^*) \subseteq Ker(\psi^*) , Ker(\psi^*) \subseteq Im(\phi^*) )をまず以下で行う。

 Im(\phi*) \subseteq Ker(\psi*) となること

 \forall g \in Im(\phi^*), \exists h \in H^q
 [g]=[ \phi (h) ]
 \phi \dot \psi=0 , \phi ( \psi (h) )= \phi (g) =0
なので
 g \in Ker(\phi^*)
といえる。

 Ker(\psi*) \subseteq Im(\phi*) となること

 \forall g \in Ker(\psi^*)
 \exists f \in C^{q-1} (U,T) s.t. \psi  g=\delta f
となる。
ψが全射であるので
 \exists x \in C^{q-1}(U,S) s.t. \psi x=f
 \psi g= \delta f =\delta \psi x= \psi \delta x
 \psi(g - \delta x)=0

Im(Φ)=Ker(ψ) (仮定)から
 \exists h \in C^q(U,R) s.t. \phi h = g - \delta x
 \delta \phi h = \delta (g - \delta x)=\delta g - \delta \delta x=\delta g
 g \in Z^q(U,S)から \delta g=0よって
\delta \phi h =0
 \phi単射なのでKer(Φ)=0
 \delta \phi h = \phi \delta h =0
なので
 \delta h =0 \Rightarrow h \in Z^q(U,R)
 H^q(U,S)=Z^q(U,S)/ \delta C^{q-1}(U,S)
なので H^q(U,R),H^q(U,S)におけるh, gの代表元をそれぞれ[h],[g]とすると
 \phi^*[h]=[g]
すなわち
 Ker(\phi^*) \subset Im(\psi^*)
 Ker(\phi^*) = Im(\psi^*)

は完全列

δ*の定義と代表元の取り方によらないこと

 \delta^* : \bar{H}^q(U,T) \rightarrow H^q(U,R) の構成

 \bar{H}^q(U,T)=\bar{Z}^q(U,T)/\delta \bar{C}^{q-1}(U,T)なので
 \forall f \in \bar{C}^q(U,T) \delta f=0 \exists g \in C^q(U,S) s.t. \psi g =f
というgが存在し
 \psi \delta g = \delta \psi g = \delta f=0
とコチェインの列の完全性 (ψが全射、Φが単射)であることから
 \phi h=\delta g
となる h \in C^{q+1}(U,R)が存在する。

同値類
 [f] \in \bar{H}^q(U,T)
 [h] \in \bar{H}^{q+1}(U,R)
に対して \delta^*
 \delta^* [ f ] = [ g ]
と定義する。
ここで
 \phi \delta h = \delta \phi h = \delta \delta g=0
Φは単射なのでKer(Φ)=0, よって
 \phi (\delta h) \Rightarrow \delta h=0

  • δ*が同値類の代表元の取り方によらないこと

  f,f' \in \bar{Z}^q(U,T)に対して
 \psi g=f, \psi g'=f', \phi h=\delta g, \phi h'=\delta g'
 f \sim f'
すなわち
 \exists c \in \bar{C}^{q-1}(U,T) s.t f-f'=\delta c
また \bar{C}^{q-1}(U,T)の定義から
 \exists a s.t. \phi a=c
このとき
 \psi(-\delta a+(g-g'))= \delta \phi a+(\phi g-\psi g')=\delta c +f-f'=0
よって

の完全性から
 \psi(-\delta a+(g-g'))=0 \Rightarrow \exists b s.t. \phi b = -\delta a+(g-g')
 \phi \delta b=\delta \phi  b = - \delta \delta a +(\delta g - \delta g') = \phi h - \phi h' = \phi(h-h')
Φは単射なので
 \delta b=h-h'
よって
 h \sim h'
代表元fの取り方によらないことが示された。

帰納的極限とパラコンパクト性を用いた拡張

帰納的極限の概念を使うと開被覆UをMに広げることができる。
さらにMがパラコンパクトであることから
 \bar{H}^q(M,T)=H^q(M,T)
とできる(らしい)ので長い完全列

を得ることができる。

links

曲面上の関数論 の3章page 53 ~ 60を写経しました。

曲面上の関数論―リーマン‐ロッホの定理へのいざない

曲面上の関数論―リーマン‐ロッホの定理へのいざない

蛇の補題について
latexのパッケージamscdを使って可換図式を書きました。
http://www.jmilne.org/not/Mamscd.pdf